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頑執妄排と本然。温泉の“本物”と“偽物”について考察。老舗旅館の「本物の温泉」説明に違和感。温泉利用形態は「源泉未加工で自然湧出+足元湧出」「源泉未加工で掘削自噴・動力揚湯+引湯」「源泉加工-1(自然冷却・熱交換)」「源泉加工-2(加水・加温)」「源泉加工(循環ろ過+消毒)」いずれも、温泉法第二条に該当していれば“本物の温泉”です。「本物」ではなく「本然」とすべきでは。

注意
この記事は現在(2023年時点)、私が持っている知識をもとに記しています。正確であるように心掛けていますが、あくまでも素人の私見を含めたものであり、時代の変遷や研究成果、法律の改正等により記した内容の正確性は永久に担保されるものではありません
よって、内容についての転記・転載は不可とするとともに、私見の違いについてのご意見は不要です。
また、内容の正確性・適格性についてはご自身の自助努力による現地確認・検証及び関係機関への問合せも必要であることを付け加えておきます。
都道府県連絡先一覧(環境省HP内)

頑執妄排(がんしゅうもうはい)」
ただ一つのことに執着して他を排除すること

本然(ほんぜん・ほんねん)」TMGPでは“ほんねん”としています。
人手を加えないで、自然のままであること。当記事の場合は源泉に対する加工無しのことを指す。
※“天然温泉”は日本温泉協会「天然温泉表示制度」に合致した温泉のことで、温泉法に規定された温泉という意味合いを持ちます。これは温泉ではない人工温泉に対する名称であり、TMGPの“本然温泉”とは意味合いが違いますが、TMGP的本然温泉は天然温泉の一部です。

★温泉法に基づく正しい表示はもちろん、「自主的に掲示することが望ましい項目(後述参照)」まで掲示している施設が他の施設よりも信頼感が増すように思っています(私見)。

▢参考資料 (★印は初心者向きでお勧め)
・環境省「逐条解説 温泉法2015年6月

★・環境省「温泉改正法のあらまし(2007年10月)」

・環境省 鉱泉分析法指針(2014年改訂)

・公正取引委員会温泉表示に関する実態調査報告書(2003年)

★・公正取引委員会ニュースリリースに対する日本旅行業協会の指針(2003年)

・公正取引委員会「温泉に関する実態調査報告書(2003年)」
※TMGPでは西暦表示で統一するようにしています。
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 温泉は転地効果と成分効果、そして施設や食事の充実により「あ~良い湯だった」と気持ち良く利用したいと常々思っています。もちろん適正価格も重要
でも、源泉の成分を分析した「温泉分析書」を見ても良くわからないし、「源泉かけ流し」と表示されていても浴槽の一部だけだったり、源泉加工(後述)してのかけ流しだったりすることがあったり、ちょっと残念な経験をしている。
源泉のデータは掲示されているのに、肝心の浴槽のデータが掲示されない理由は何なんだろうか。
そんな体験から温泉についての基礎知識が必要であると思い立ち、この一年で温泉ソムリエ,温泉ソムリエ分析書マスター(温泉ソムリエ協会),温泉名人(日本温泉協会)、温泉観光士(日本温泉地域学会)などの養成講座を受講し試験に合格してきました。

また、少ないながらも入浴源泉数100源泉/年間を目標に入浴体験を進めています。(ではなくを優先)

 先日、と、ある老舗温泉旅館に宿泊した時の事。
本物の温泉」を力説する湯守の方の説明を聞いていて、違和感を持ったのでその覚書として記録しておくことに。

 まず、温泉とは何か
我が国には温泉法があり、その第二条で以下のように定義されている。
~「温泉」とは、地中からゆう出する温水、鉱水及び水蒸気その他のガス(炭化水素を主成分とする天然ガスを除く。)で、別表に掲げる温度又は物質を有するものをいう。~
すなわち、大きく分けて「温度」と「成分」の区分があり、温度は25℃を基準に、成分は以下の分量を基準値としている。
※鉱泉は「地中から湧出するもの」、そのうち“温泉の定義に合致するもの”が「温泉」。別途、温度帯別の泉質分類では源泉温度が25℃未満のものを「冷鉱泉」と表示しているので混同しないように注意。

温泉法第2条別表第1-1表 鉱泉の定義(常水と区別する限界値)
 鉱泉分析法指針(平成14年3月改訂)
 物質名・含有量(1kg中)基準値(以上)
 以下、どれか一つでもクリアすれば「温泉」
・溶存物質(ガス性除く)1,000mg
・遊離炭酸(CO₂)250mg
・リチウムイオン(Li)1mg
・ストロンチウムイオン(Sr)10mg
・バリウムイオン(Ba)5mg
・フエロ又はフエリイオン(Fe₂,Fe₃)10mg
・第一マンガンイオン(Mn) 10mg-
・水素イオン(H)1mg
・臭素イオン(Br)5mg
・沃素イオン(I)1mg
・ふつ素イオン(F) 2mg
・ヒドロひ酸イオン(H3AsO4)1.3mg
・メタ亜ひ酸(H3AsO2) 1mg
・総硫黄(S) 1mg
 (HS’+S2O3+H2S に対応するもの〕
・メタほう酸(HbO2)5mg
・メタけい酸(H2SiO3)50mg
・重炭酸そうだ(NaHCO3)340mg
・ラドン(Rn)20(百億分の一キユリー単位)
・ラヂウム塩(Raとして)一億分の1mg以上
 ※昭和二十三年法律第百二十五号温泉法別表より抜粋転記

 ちょっとややこしいが、温度が25℃(日本の平均気温から設定されている)以上あれば成分はともかく「温泉」であり、逆に成分が上記リストのうち、1物質でも基準値をクリアしても「温泉」である。
ということで、温泉は“高温の温泉”“冷たい温泉”や“成分が薄い温泉”“成分が濃い温泉”が混在していることをまずは知っておきたい。
(温泉は温度や成分が湧出する位置が一定で、湧出水の温度、成分等が固定的継続的現象と認められることが前提になっています。海水にも温泉成分が入っていますが、地中からの湧出よりも水の大循環※がメインなので温泉ではありません)
※“水の大循環”とは「太陽によって海水や地表面の水が蒸発し、上空で雲になり、やがて雨や雪になって地表面に降り、それが川となって海に至る」を繰り返すこと。

 もうひとつ、知っておかなければならないこととして、「源泉湧出地での温度や成分によって温泉かどうかを決めている」ということであり、その内容(成分その他)は「温泉分析書」を確認することで知ることができます。
温泉分析書は温浴施設に表示されているか、されていなければフロントで「温泉分析書見せてください」とお願いすればたいていは分析書を見せてくれます。
分析書は都道府県知事への登録分析機関発行のもので、直近10年以内の分析表であることが温泉法で義務付けられています。
時折、10年以上前の分析書が掲示されていることがあるが、経費節減のため未調査だけでなく、新たに分析したら大きく成分量数値が下がったといった泣くに泣けない事情もあるようですが、いずれにしても温泉法違反です。
ついでに知っておきたいこととしては、温泉分析書そのものの表示は義務ではありません。
義務のあるものとして以下の内容を浴室付近に掲示することが改正温泉法(2007年)で追加されました。
特に、9~13は温泉分析書には表示されないこともあるため、最重要項目となります。加水加温循環ろ過、消毒などを実施していれば表示義務が発生します。(これまでに入浴した温泉施設で未掲示が数か所ありました)

 源泉がどんなに素晴らしい数値を示しても、浴槽に注がれる湯を薄めて使ったり、くりかえし循環ろ過したりすれば源泉分析書データとの差異が生じるおそれがあります。
できれば浴槽毎の温泉分析があればうれしいのですが、多くの浴槽を持つ施設では経費的に難しいようです。また、浴槽内の成分は源泉よりも変化があるので浴槽の分析表示はかえって混乱するのではないかという意見もあります。
でも知りたいのは実際に入浴する浴槽の成分がどうなっているかですね。

◆温泉水の施設での利用形態
 「温泉成分等の掲示(温泉法第18条第1項)
1.源泉名
2.温泉の泉質
3.温泉の温度
4.温泉の成分
5.温泉の成分の分析年月日
6.登録分析機関の名称及び登録番号
7.浴用又は飲用の禁忌症
8.浴用又は飲用の方法及び注意
9.加水理由(源泉温度が高いので加水等)
10.加温理由(入浴に適した温度を保つため加温等)
11.循環ろ過理由(温泉資源の保護と衛生管理のため循環ろ過装置を使用等)
12.入浴剤理由(香りを楽しんでもらうため等)
13.消毒の方法と理由(同:衛生管理のため塩素系薬剤を使用等)

 これが表示されていない温浴施設は改正温泉法を無視(法律違反)しているか、何か隠したい事情があると思うことにしている。
特に加水理由のところに注目して欲しい。高温泉、100℃近くある源泉を入浴に適した温度に下げるために加水して調整するが、温度を下げるためだけでなく、湧出流を補完するために「水増し」されることがあると聞く。あくまでも伝聞だが、某地域の元宿泊施設従業員の方の話では「7~8割水増しすることもある」と伺ったことがある。
正否は不明だが、加水量や湧出量・投入量について施設に表示が無いとそういった憶測までしてしまうのが怖い。

 また、施設によっては加水ではなく熱交換器による冷却を実施している温泉地、例えば草津温泉等もある。
高温泉分類の源泉で「源泉100%かけ流し」と表示されている場合は、自然冷却の他、熱交換器による冷却により源泉の成分変化を極力抑える努力をされていることには拍手。
もちろん、源泉温度が入浴適温になって湧出されている温泉よりは成分に対する影響はあると思うが、それでも量不明な「源泉温度が高いので加水」よりは好印象。

 「源泉かけ流し」と表示されていても、加水・加温された源泉を循環ろ過無しで放流式で利用している場合もあったり、施設内の一か所でもかけ流し運用されているだけで「源泉かけ流し」と表示されていることもあります。これは要注意ですね。
「100%源泉かけ流し」と表示している施設で「源泉を加水していないが加温をしてかけ流し」ということもありました。
浴槽毎に加水・加温の表示をしている施設は信頼感が増します

 温泉分析書の話が出たのでついでに「療養泉」のことも触れておきたい。
療養泉とは、「温泉のうち、特に治療の目的に供しうるもので、以下の温度又は物質を有するもの」と定義されています。

■温泉法第2条別表第1-2表 療養泉の定義

1. 温度(源泉から採取されるときの温度) 摂氏25度以上
2. 物質(以下に掲げるもののうち、いずれか一つ)
物質名含有量(1kg中)
溶存物質(ガス性のものを除く)総量1 000mg以上
遊離二酸化炭素(CO2)1 000mg以上
総鉄イオン((Fe2,Fe3)20mg以上
水素イオン(H)1mg以上
よう化物イオン(I)10mg以上
総硫黄(S)〔HS-+S2O32-+H2Sに対応するもの〕2mg以上
ラドン(Rn)30(百億分の1キュリー単位)=
111Bq以上(8.25マッヘ単位以上)

 上記の療養泉の定義に合致すると「泉質名が表示できる」「適応症を表示できる
というメリットがあり、温泉客に対して、よりアピールすることができることに。
ここで大事なことは、療養泉でないと「泉質名がつかない」「適応症を表示できないということで、療養泉でもない温泉に「単純温泉」という療養泉の泉質名をつけて表示していることもあるので要注意(温泉施設紹介本や温泉紹介専門サイトでもありました)。
温泉だけど療養泉基準未達の場合は「泉質名無し」と覚えておきましょう。
経験則として、泉質名無しでも「あ~気持ち良かった的効果」は期待できますし、高張性(10g/リットル以上)の成分濃いめの温泉よりも気分が良くなることも多々。

 ここで大事なことを一つ付け加えておきたい。
療養泉としての適応症表示を行う場合には,同適応症が源泉を基準に判断したものである場合はその旨を明瞭に表示し,浴槽内の湯を基準に判断したものであるとの誤認を消費者に抱かせないようにする必要がある。
また,浴槽内の湯について適応症表示を行う場合には消費者が実際に利用する浴槽内の湯が療養泉としての基準値を維持していることを確認する必要がある。これは意外と知られていないことなので温泉好きの方は確認しておきたい項目ですね。

↓温泉表示に係る景品表示法上の考え方。
公正取引委員会ニュースリリースに対する日本旅行業協会の指針(2003年)

よって源泉分析書別表以外で「療養泉」と浴室掲示する施設はほとんどないか、表示していてもルールを知らないだけなので要注意。

 温泉の定義がわかったところで、温泉入浴の目的の一つである“効能”について。
結論から申し上げると温泉についての適正掲示は効能表示(〇〇に効く)ではなく「禁忌症表示」「適応症表示」です。
これは温泉の成分によって効用を特定することが困難であることが理由です。
もちろん、「〇〇に効く」と古来より伝承されていたり、実際にガンが治った等の事例もあるため、一概には否定・肯定はできないが、あくまでも温泉は各種成分による免疫力向上が期待できるということを前提にして温浴を愉しみたいと思っています。
 環境省 温泉療養のイロハ
ちなみに掲示義務は「禁忌症」のみで、「適応症」は任意表示だが、たいていの施設は適応症も表示してくれています。
古い施設だと昔の「効能」という表示が多いですね。(#^^#)
伝統的な言い伝えによる効能については別途規定があります。これについては話が長くなるので割愛します。

 さあ、いよいよここからが本題。
冒頭の老舗温泉旅館の湯守さんの「本物の温泉発言」。

TMGP温泉部では以下のように分類し、天然温泉入浴時に現地確認するようにしています。
※【 】内はTMGP内の呼称

1. 源泉未加工で自然湧出+足元湧出【本然温泉

  源泉が地表に出ることなく浴槽に注がれている。適温の源泉でないと難しい。希少価値。

2. 源泉未加工で掘削自噴・動力揚湯+引湯【準本然温泉

  地表に湧出された源泉をそのまま浴槽に引湯。
  地表に現れた時点でガス成分が消失し、引湯距離が長いと成分に影響を与える危惧。

3. 源泉加工-1 自然冷却・熱交換【準本然温泉

  自然冷却と熱交換の方法により成分に対する影響に差異があるので要確認(聞いても説明してくれないことが多い)

4. 源泉加工-2 加水・加温【加工温泉

  循環ろ過はしていない利用。加水の程度が不明であることが多いのが不満。また、加水・加温しているけど循環していない「かけ流し(放流式)」という表示をしている施設もあります。要確認。

5. 源泉加工-3 循環ろ過+消毒【加工温泉

  源泉湧出量に対して浴槽規模が大きく、循環して使わないとまかなえない。施設が豪華だと成分に興味のない人にとっては温度も適温で気持ちの良い入浴ができる。
消毒については都道府県により義務付けられていることもあるため消毒しているからダメという判断はしていません。大規模な温泉施設においては,効率的な衛生管理及び温度管理を行うために循環式浴槽は不可欠であるという意見もあります。
塩素系薬剤,オゾン殺菌,紫外線殺菌,銀イオン殺菌等といろいろあるが、レジオネラ菌や大腸菌対策で酸化性殺菌剤で消毒する場合、見えない汚れが削減される効果がある。逆にアルカリ性泉質の源泉では塩素系薬剤の消毒効果が低下することも報告されている。(温泉表示に関する実態調査報告書:公正取引委員会2003年)

もっとも、浴槽の掃除が行き届かなかったり、お湯の鮮度が悪くなる(入浴客が多かったり滞留があったり投入量が不十分)と消毒剤の臭いを余計に感じることがある。

 上記、1.から5.までの分類のうち、どれを嗜好するかと問われれば、1.源泉未加工で自然湧出+足元湧出本然温泉】であることはもちろんだが、全国探しても極く少ない。
できれば2.の源泉未加工で掘削自噴・動力揚湯+引湯【準本然温泉】を狙って入りたいが、源泉地から遠い場合、源泉データと浴槽の成分変化が不明
また、入浴客数(1人あたり0.5gの汚れを浴槽に残すと言われている)によっては浴槽内の汚れも気になる。
客一人当たり1リットル/分以上あればかけ流し運用が成り立つと言われているが、湧出量はともかく、投入量は自分で観察あるいは風呂桶で確認するしかない。
浴槽の温泉投入口から浴槽湯の排出口までの流れが滞ってないかの確認も必要。(意外と気にしない人が多いが、温泉好きは湯尻から入って次第に投入口方面に向かうのが良いとする人が多い)
源泉かけ流しの場合でも、投入量によっては誰も入浴していない朝一番湯を狙って入浴しています。
24時間入浴施設では誰も入浴しないであろう時間帯、すなわち深夜に入浴していますが、お湯の入替を日々実施している温泉では入替直後に入浴したいと思っています。例えば、チェックイン直後。
じゃないと、源泉テータを見て「美肌の湯」「慢性婦人病」「高血圧症」に効能があると思っても実際は期待する成分量が浴槽には含まれていないことがあるかも?

 こうなると知識が邪魔して「あ~気持ち良かった」にならない。

閑話休題

 前述の老舗旅館の湯守さんは上記のうちの 2.源泉未加工で掘削自噴・動力揚湯+引湯【準本然温泉】を“本物”としているようです。
人によっては1. 源泉未加工で自然湧出+足元湧出【本然温泉】を“本物”とするかもしれません。
私は温泉法に則れば1.5.まで、基準値さえクリアしていれば“本物”だと思います。
すなわち、人によって“本物”の基準が違うので、説明を受けた客側が知識の有無により「(湯守の言うところの)本物以外は偽物」という価値判断をしてしまうんじゃないかと心配していろいろと質問しようとしましたが、きちんとした返答(納得する説明)をしてもらえませんでした。湯守さんに直接、話を伺う機会はほとんどないだけに楽しみにしていたので非常に残念でした。

 嗜好する優先順位は 1. から始まり、できれば2.までに入浴したいと思いつつ、5.であってもきちんと宿泊前にわかっていれば文句を言わずに入浴します。(1.2.の場合は施設側もしっかりとホームページでアピールしているが、5.に近づくほどナイショのことが多いように思う・・・)
特に妻が同行時は、妻が温泉の泉質や運用形態よりも施設設備の状態や適正価格かどうかを最重要項目としているため、1.2.はほとんどありません。
今回はなんとか妻に妥協(比較的高単価宿泊費について)してもらって2.の運用をしている施設に宿泊。それでも妻の意見としては「浴室にドライヤーがない」「洗い場が少ない」「貸切風呂の湯の温度が低すぎた(前客が過加水)」という感想でした(泣)。
今回は特に思い入れのあった温泉旅館でもあり、施設の表示も「自主的に掲示することが望ましい項目」までしっかりと掲示してくれている。
本当に立派な老舗旅館だけに「本物の温泉」についての説明内容が残念でした。

 施設にはどのような利用運営であったとしても「自主的に掲示することが望ましい項目」まで掲示してくれていれば信頼できる施設であると思っています。
できればホームページに「自主的に掲示することが望ましい項目」「表示義務付けされている項目」を掲示されることを望んでいます。

 これは温泉好き皆さんの協力が必要で、掲示されていなければ「浴槽別の運用形態は?」「温泉分析書は?」「自主的に掲示することが望ましい項目は?」とフロントでいちいち確認していただければそのうち施設側も面倒になり、浴室やホームページに掲示してくれるようになるかも。
フロント業務に支障のない範囲で聞いてみることをお勧めします。
もし、違反事例や疑問点があれば以下に問い合わせると対応してくれます。
都道府県連絡先一覧(環境省HP内)

<結論>
源泉かけ流し」にこだわりすぎるよりは浴槽の状況(源泉運用、衛生、何より入浴湯の鮮度)に興味を持ちましょう。
TMGPの嗜好としては【本然温泉】と【準本然温泉】がお気に入りですが、必須条件にしてしまうと入浴体験対象施設が狭くなります。

※本然温泉はTMGP内の造語です。“本然”の意味は記事冒頭に記しています。“本然温泉”の意味は記事中段に記しています。
温泉利用前に何の目的で温泉に入浴するのかを決めてから施設を選びましょう。「泉質重視派」「運用形態重視派」「施設充実型」。なかなか全部を網羅する施設はありませんが、行ったらガッカリということはできるだけ少なくしたいですね。

他人に温泉について説明する時は自分の嗜好やこだわり感覚の押し付けしないようにしましょう。

温泉法に則り、適正な運営と表示をする施設はすべて“本物だと思います。
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◇以下、参考データ
温泉の一般的禁忌症(浴用)
急性疾患(特に熱のある場合)
活動性の結核
悪性腫瘍
重い心臓病
呼吸不全
腎不全
出血性疾患
高度の貧血
その他一般に病勢進行中の疾患
妊娠中(特に初期と末期)

療養泉の一般的適応症(浴用)
神経痛、筋肉痛、関節痛、五十肩、運動麻痺、関節のこわばり、うちみ、くじき、慢性消化器病、痔疾、冷え性、病後回復期、疲労回復、健康増進

温泉の泉質別適応症
単純温泉(泉温25℃以上だが溶存成分1,000mg/kg以下)
・アルカリ性単純温泉はp,H8.5以上
・(浴用)自律神経不安定症、不眠症、うつ状態
塩化物泉(陰イオンの主成分が塩化物イオン)
熱の湯
・皮膚に塩分が付着するため保温効果・循環効果
・(浴用)きりきず、末梢循環障害、冷え性、うつ状態、皮膚乾燥症
・(飲用)萎縮性胃炎、便秘
炭酸水素塩泉(陰イオンの主成分が炭酸水素イオン)
美人の湯
・皮膚の確執を軟化する作用
・(浴用)きりきず、末梢循環障害、冷え性、皮膚乾燥症
・(飲用)胃十二指腸潰瘍、逆流性食道炎、耐糖能異常(糖尿病)、高尿酸血症(痛風)
硫酸塩泉(陰イオンの主成分が硫酸イオン)
・飲んで胆のうを収縮させ、腸の蠕動を活発化
・(浴用)きりきず、末梢循環障害、冷え性、うつ状態、皮膚乾燥症
・(飲用)胆道系機能障害、高コレステロール血症、便秘
二酸化炭素泉(二酸化炭素1,000mg/kg以上)
泡の湯
・炭酸ガスが皮膚から吸収され、保温効果や循環効果
・きりきず、末梢循環障害、冷え性、自律神経不安定症
・胃腸機能低下
含鉄泉(総鉄イオン20mrg/kg以上)
・空気に触れると酸化により金色に変化
・(浴用)無し
・(飲用)鉄欠乏性貧血
含よう素泉(よう化物イオンを10mg/kg以上)
・非火山性温泉に多い。
・(浴用)無し
・(飲用)高コレステロール血症
酸性泉(水素イオン1mg/kg以上)
殺菌力が強い。入浴後にかけ湯して退出
・(浴用)アトピー性皮膚炎、尋常性乾癬、耐糖能異常(糖尿病)、表皮化膿症
・(飲用)無し
硫黄泉(総硫黄2mg/kg以上)
・殺菌力が強く表皮の最近やアトピー原因物質を取り除く
・(浴用)アトピー性皮膚炎、尋常性乾癬、慢性湿疹、表皮化膿症(硫化水素型については、末梢循環障害を加える)
・(飲用)耐糖能異常(糖尿病)、高コレステロール血症
放射能泉(ラドンを8.25マッヘ以上)
・(浴用)高尿酸血症(痛風)、関節リウマチ、強直性脊椎炎など
・(飲用)無し

温泉療養について
① 温泉療養の効用は、温泉の含有成分などの化学的因子、温熱その他の物理的因子、温泉地の地勢及び気候、利用者の生活リズムの変化その他諸般によって起こる総合作用による心理反応などを含む生体反応です。
② 温泉療養は、特定の病気を治癒させるよりも、療養を行う人の持つ症状、苦痛を軽減し、健康の回復、増進を図ることで全体的改善効用を得ることを目的としています。
③ 温泉療養は短期間でも精神的なリフレッシュなど相応の効用が得られますが、十分な効用を得るためには通常2~3週間の療養期間を適当とするものです。
④ 適応症でも、その病期又は療養を行う人の状態によっては悪化する場合がありますので、温泉療養は専門的知識を有する医師による薬物、運動と休養、睡眠、食事などを含む指示、指導のもとに行うことが望ましいです。

▢症状別泉質選択表(環境省)
環境省 温泉療養のイロハ

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鉱泉の分類
・泉温の分類
 冷鉱泉 25℃未満
 低温泉 25℃以上34℃未満
 温泉 34℃以上42℃未満
 高温泉 42℃以上
液性の分類
 酸性pH3未満
 弱酸性pH3以上6未満
 中性pH6以上7.5未満
 弱アルカリ性pH7.5以上8.5未満
 アルカリ性pH8.5以上
浸透圧の分類
 低張性溶存物質総量が8g/kg未満
 等張性8g/kg以上10g/kg未満
 高張性10g/kg以上
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足元湧出温泉(一例)
・北海道 然別峡かんの温泉
・北海道 池ノ湯温泉露天風呂
・北海道 和琴温泉露天風呂
・北海道 丸駒温泉旅館
・北海道 ニセコ薬師温泉旅館
・青森県 酸ヶ湯温泉
・青森県 蔦温泉 蔦温泉旅館
・青森県 谷地温泉(三大秘湯)
・岩手県 鉛温泉 藤三旅館
・秋田県 乳頭温泉郷鶴の湯
・秋田県 奥子安大湯温泉
・山形県 湯守りの宿三之亟
・山形県 蔵王温泉 河原湯共同浴場
・宮城県 鬼首温泉
・福島県 木賊温泉 岩風呂
・福島県 横向温泉 滝川屋旅館
・福島県 湯岐温泉山形屋旅館(岩風呂)
・福島県 大丸あすなろ荘
・福島県 湯ノ花温泉石湯
・栃木県 奥塩原新湯温泉むじなの湯
・栃木県 福渡温泉 岩の湯
・栃木県 奥那須温泉
・群馬県 法師温泉 長寿館
・群馬県 尻焼温泉 河原湯
・群馬県 法師温泉 長寿館
・新潟県 栃尾又温泉したの湯
・山梨県 増冨温泉不老閣
・山梨県 下部温泉古湯坊 源泉舘
・富山県 鐘釣温泉
・長野県 切明温泉
・長野県 奥蓼科温泉渋御殿湯
・和歌山県 川湯温泉仙人風呂
・和歌山県 湯の峰温泉つぼ湯
・和歌山県 白浜温泉崎の湯
・岡山県 湯原温泉郷郷緑温泉郷緑館
・岡山県 奥津温泉奥津荘
・岡山県 奥津温泉東和楼
・岡山県 湯原温泉 砂湯
・岡山県 真賀温泉 幕湯
・鳥取県 岩井温泉 岩井荘
・鳥取県 三朝温泉 旅館大橋
・鳥取県 三朝温泉 中屋
・島根県 千原温泉湯谷湯治場
・島根県 川底温泉蛍川荘
・山口県 長門湯本温泉 恩湯
・大分県 壁湯温泉福元屋
・大分県 川底温泉 蛍川荘
・熊本県 地獄温泉青風荘
・鹿児島県 指宿温泉村之湯共同浴場
・鹿児島県 湯川内温泉かじか荘
(個人調べ、転記不可、入浴の際は自助努力・自己責任で足元湧出であるかの再確認をお願いします。いないとは思いますが「行ったけど足元湧出じゃなかった。どうしてくれるんだ」という問い合わせについては責任を負えません)

作成者: tanakatmgp

商業施設と観光。時々神社仏閣。日本温泉科学会員、日本温泉地域学会員、温泉観光士,温泉名人検定合格,温泉ソムリエ,温泉分析書マスター。研究テーマは「全国各地の温泉分析書を現地現物確認し、源泉データを温泉地別に比較。温泉地環境と温泉資源の運用方法」