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旅行 温泉組織と学会

温泉の資格取得。温泉観光士,温泉名人検定,温泉ソムリエ,温泉ソムリエマスターの違い。日本温泉地域学会,日本温泉科学会,日本温泉協会,

 私(TMGP田中健一)は温泉関連学会である「日本温泉地域学会」と「日本温泉科学会」に所属し、特に温泉分析書のデータ収集温泉利用や運営方法(源泉運用や表示関連)についてフィールドワークに取り組んでいます。
そのための情報収集や能力向上を目指して、温泉に関するセミナーや資格認定試験に参加。
今回は日本にいくつかある温泉研究団体の一つである「日本温泉地域学会」の「温泉観光士養成講座」に参加させていただきました。

■私の所属団体(個人正会員)
日本温泉地域学会
日本温泉科学会

●温泉関係講座参加記録と認定資格
・温泉ソムリエ講座(2022年11月web講座受講)
・温泉ソムリエ認定確認試験合格(2023年2月)
・温泉ソムリエステップアップ講座
 (温泉分析書マスター認定2023年4月)
・日本温泉協会 温泉名人認定(2023年3月)
・日本温泉地域学会 温泉観光士認定(2023年11月)

 温泉に関する資格は公的なものを含めていくつかあるものの、資格認定が目的ではなく、フィールドワークに必要な知識を身につけるためのセミナー参加なので、「短期間」「低価格」「学術と実用のバランス」というテーマに合致した講座内容を選択。
温泉ソムリエについては学術的内容よりも「より温泉を楽しむ」ことを目的にされているのかなという印象。
温泉ソムリエはweb講座で受講したが、実際の講座も全国各地で開催されているため、他の資格講座に比べて参加しやすいというメリットがあります。

確認テストはあるものの、テストに合格しないと認定されないということはありません。私はあえて、認定確認試験(有料)を受験しましたが、特に難しい試験ではありませんでした。
他人に「私、温泉ソムリエよ~」と自慢したい方向きです。
観光案内や美容関係の仕事に従事されている方は営業的なメリットはあるかもしれません。

温泉ソムリエ認定は28,490名(2024年1月確認時)に対して、温泉ソムリエ認定者が受験する温泉ソムリエ検定合格者は2,149名と、圧倒的に少なくなります。ちなみに私の合格者番号は「1981番」と紹介されいる

さらに認定者が「温泉ソムリエのステップアップ講座」を受講すると「★付温泉ソムリエ」になります。人数としては3,898名で温泉ソムリエ28,490名に対する希少性は段違いとなりますね。私はリストの「3,450番目」となっています。

↓ ★付温泉ソムリエ用バッチ(有料)

★付ステップアップ認定」は「温泉ソムリエ温泉分析書マスター認定者1,994名」、「温泉ビューティソムリエ,ダイエット温泉ソムリエ認定者(724名)」、「温泉ソムリエ地域活性化マスター(421名)」、「外部資格による温泉ソムリエマスター認定者(1,339名)」があり、私は温泉ソムリエ温泉分析書マスター認定者リストの「1,887番」です。

↓ 受講した温泉分析書マスター会場とテキスト

尚、さらに★が多い方々もいらっしゃいますが、有名人や師範級の方々が認定されていて、私のような一般人は★1個までとなります。温泉ソムリエ協会は有名人優遇スタイルのようです。

・★5個1名
・★4個5名
・★3個18名
・★2個66名
・★1個3,898名
(2024年2月1日確認時)

温泉ソムリエはこの「★付」以上になることを強くお勧めします。

尚、「外部資格による温泉ソムリエマスター認定者(1,339名)」は外部組織の認定者のうち、温泉ソムリエマスター登録を申請した方々となっています。
草津温泉や九州の別府温泉のような地域独自の温泉資格が別に存在しているが、全国の温泉を対象にしているという点で、ほぼ日本における温泉資格を網羅していますね。
・日本健康開発財団「温泉利用指導者」「温泉入浴指導員」「温泉健康指導士」の資格を取得された方。
・日本温泉地域学会「温泉観光士」の資格を取得された方。
・温泉観光実践士協会「温泉観光実践士」の資格を取得された方。
・高齢者入浴アドバイザー協会の「高齢者入浴アドバイザー認定講師」の資格を取得された方。
・温泉ORP評価委協会「水・温泉ORP評価アドバイザー」の資格を取得された方。

 温泉ソムリエは「一般人が温泉を楽しむための基本的教育を受講した人」といった位置付けでしょうか。
★付の温泉ソムリエマスターは「さらに踏み込んで分野別の半日セミナーを受講した人」ですが、内容は基本的なことで、あくまでも「温泉を楽しむ」ことが主題となっている印象でした。

 私が温泉関係の認定を受けたものには別途、日本温泉協会の「日本温泉名人認定試験」があります。
2023年3月12日9時30分~18時にかけて千葉県の流通経済大学新松戸キャンパスでセミナー受講後、当日に温泉検定試験を受けて、規定点数(36点/60点)以上で「本温泉名人」に認定されます。

セミナー内容は下記の通り。
9時30分受付
・セミナー1 温泉法学(50分)周作彩
・セミナー2 温泉医学(50分)前田眞治
休憩・自由昼食(60分)
・セミナー3 温泉総論(50分)坂寺一洋
・セミナー4 温泉地学(50分)大山正雄
・ セミナー5 温泉化学(50分)加藤尚之
・セミナー6 温泉観光学(50分)高橋裕次
・温泉検定 試験開始(60分)
18:00 試験終了・解散
↓ 温泉名人検定受講場所とテキスト

 テスト内容としては後で受験した「温泉観光士」の認定テスト同様に結構、深い内容のものもあるが、事前にテキストを一通り読んでセミナーを真面目に受講していればほぼ合格できます。まったく知識を持たない方が受験するとしたら、相当、講座内容とテキストを読み込む努力が必要かと。
私はその前に温泉ソムリエ講座や温泉分析書マスター講座を受けていたので合格点以上は余裕で取ることができたものの、温泉認定試験の中では難易な部類だと思います。
セミナー内容としては学術分野が中心で、温泉ソムリエが「一般人が温泉をより楽しむための知識」であることに対して、温泉名人は「温泉研究者と運営関連施設者・管理者による教育で実践的で且つ学術的な温泉知識を深める」といった印象でした。
尚、温泉ソムリエのセミナーと違って首都圏のみでの開催であることや開始時間の都合から前泊しないといけないため地方在住者は少々、経済的な支出が多くなります。

 そして、今回は私の所属する「日本温泉地域学会」による「温泉観光士養成講座」。

温泉観光士養成講座開催概要
期間 2023年11月25日~26日
主催 日本温泉地域学会
会場 杏林大学井の頭キャンパス
受講料 一般:10,000円 学生:8,000円

 2日間、9コマの講義で最後にテストがあります。合格点は不明ながら、参加者全員が合格していたので、2日間の講義を受けて、テストを受ければ合格できるのかなといった印象ながらも、第3回の温泉検定では合格率90.6%だった(観光経済新聞記事より)らしいので、不合格の人がいるのかもしれませんね。
ちなみに満点は1人ということですが、私の正解率は前述の温泉名人検定よりも良好でしたよ。!(^^)!。

 先に結論から言うと、講義される方のレベルが高く、且つ、内容が充実していて非常に楽しい講座だったことを記しておきます。
温泉観光士」は温泉ソムリエほど知名度がないものの、温泉好きでより深く勉強したいと思われる方は是非とも受講をおすすめします。
どちらかというと、「温泉を楽しむ」というよりは学術寄りの内容でした。
特に、私が所属する「日本温泉科学会」は日本の温泉研究の草分け的存在で、その会長である前田眞治博士の温泉医学講座はデータ豊富で「なるほどね~」といった内容で今までの疑問だったことを数値で示していただけたことが嬉しかった。(実は前田先生の講義は温泉名人に続き2回目なので、より深く理解することができたことを付け加えておきます)。
講義後には挨拶させていただき、個人的な質問にも丁寧に解説していただきました。
Q.酸ヶ湯温泉の古い画像で男性が下帯をつけている理由。
A.強烈な酸性泉(p.H.1.8~1.9)から男性の弱い部分(陰嚢)を保護するため。
↓ 昭和初期。男性は下帯着用

↓ 現在は混浴だけど下帯無し。ご婦人は湯あみ着。

↓ 2023年1月入浴

Q.玉川温泉の古い写真で露天風呂が写っていましたが、どのあたりにあったのでしょうか。

A.大噴源泉の近くで川の合流点付近ではないかと推測。
↓ 玉川温泉の岩盤浴場付近の噴火口
2023/05/13撮影 屋外岩盤浴と噴火口付近


↓ 大噴源泉から玉川温泉までの湯引桶。
↓ 屋外岩盤浴場の近くの小川
↓ 俯瞰図。露天風呂は画像中央部に右側付近にあったことを初代の「玉川温泉湯治の手引き」その他書籍で確認。

↓ 初代「玉川温泉の手引き」とその他、玉川温泉関連書籍。
↓ 位置としては右側の屋外岩盤浴場の左付近。

↓ 撤去前の露天風呂。

↓ 岩盤浴付近の雪崩事故新聞報道(2012年)
前田眞治博士の解説、湯治手引きの新版である「玉川温泉湯治の手引き(改訂版)」は実にわかりやすく、且つ、温泉初心者から温泉に詳しくなりたいと思う方々の手引書となる本だと思います。

↓ 玉川温泉湯治の手引き(改訂版)

 (北投石の岩盤浴は新玉川温泉にはなく、玉川温泉の屋外のみなのでお間違いなきよう。
源泉はいずれも大噴源泉ですが、新玉川温泉は源泉から約2kg離れた場所にあります。

湯治目的ならばきちんと理解するための参考書を熟読の上、新玉川温泉ではなく玉川温泉へ行くべし

冬季は休業しているし、団体ツアーでは新玉川温泉までだったりするので県外者にとってはハードルが高い温泉です。
私も2023年1月に新玉川温泉を訪れたのですが、北投石の岩盤浴は玉川温泉にしか無いことを初めて現地で知り、今度こその思いで2023年6月に玉川温泉を訪れました。

↓ ちなみに、私のお気に入りの温泉本は信濃孝一氏の「温泉を知る」。しっかり各温泉場の温泉分析書のデータ解説が紹介されていて私の温泉旅行目的と合致。↓

 また、東京理科大学の名誉教授の長島秀行先生や京都大学名誉教授の由佐悠紀先生は学術的な温泉分野の先達であり、大学関係の共通の知人の話題も合わせて講義後にご挨拶させていただきました。

 印象に残っているのは温泉化学の講義の中で「野湯へのガスマスクでの入浴に関する危険性」についての解説。「防毒マスクは硫化水素事故のリスクあり。使うなら酸素補給可能なタイプのマスクを使うこと」。
あ~怖。防毒マスクはもちろん、酸素マスクの必要な温泉には行きたくない。
↓ リスク有。だんだん効かなくなるらしい→突然のノックダウン→死の恐怖。

↓これ位の装備が必要。尚、流化水素は皮膚呼吸の影響は少ないらしい。毒ガスマスク愛用の野湯マニアは要注意。↓

 内容的に面白かったのは温泉観光学(小堀貴亮教授)と、私の所属する「日本温泉地域学会」石川理夫会長の温泉歴史学・文化論。
↓ 石川氏の著作本のうち、「本物の名湯ベスト100」を強くお勧めします。(TMGP過去記事で登場する「本物温泉」主張者とは別の方です)。文化・泉質・歴史を考慮しながら3人の意見でリスト化されたらしい。
「あまりに施設豪華主義になりがち」という昨今の温泉施設事情に対する温泉探究者による評価です。

また、小堀教授が実践されたフィールドワークや石川会長の温泉文化論は今後の温泉研究にとって大変有意義でした。感謝です。

さて、本題(^ー^)。

 講座は2日間ですが、朝9時からなので吉祥寺で前泊。二泊して、帰りは深夜自宅着。
吉祥寺駅から杏林大学井の頭キャンパスまでは小田急バスが頻繁に出ていて助かるが、杏林大学医学部付属病院へ間違えて行く人がいたりするので要注意。
三鷹の森ジブリ美術館の横を通ってバス乗車10分程度で到着。

杏林大学
理系・文系の4学部15学科の総合大学で大学設置は1970年と比較的新しい。
医学部、保健学部、総合政策学部,外国語学部、大学院(医学研究科、保険学、国際協力)があり、井の頭キャンパス、三鷹キャンパス、八王子キャンパスがある。
東進の偏差値ランキングを見ると、医学部と保健系の学部偏差値は60~65で、文系を含めて日本大学レベル。

杏林」の名は後漢時代の廬山の医師「董奉(とうほう)」の故事、弱者・貧民を救済し、治療費の代わりに杏の木を植えさせた。やがて杏林となり、そして「虎守杏林」の伝説となって世にと知られるようになる。杏仁豆腐も董奉による。(所説あり)

今回は井の頭キャンパスで受講。

 画像は各講師が説明したパワーポイント全内容です。文字は読めないようにしています。ごめんなさい。

【1日目】

 9:00受付開始 9:30開講
温泉地学 ~温泉とは・湧出機構・保護と利用~
 (京都大学名誉教授 由佐悠紀氏)

温泉化学 ~温泉成分・温泉分析・温泉管理~
 (中央温泉研究所研究部長 滝沢英夫氏)

温泉生物学 ~温泉微生物・レジオネラ属菌~
 (東京理科大学名誉教授 長島秀行氏)

温泉工学 ~温泉掘削・集中管理・浴槽~
 (国際温泉研究院代表 濱田眞之氏)

温泉歴史学・文化論 ~温泉史・温泉文化論~
 (温泉評論家 石川理夫氏)
 16:30終了

【二日目】
 9:00受付開始 9:30開講

温泉医学 ~温泉療養・入浴法・温泉と健康~
 (国際医療福祉大学大学院教授 前田眞治氏)

温泉経済学 ~資源管理・雇用と労働力~
 (一橋大学大学院専任講師 高柳友彦氏)

温泉観光学 ~温泉地の観光発達と現状~
 (杏林大学教授 小堀貴亮氏)

温泉法学 ~温泉法・温泉行政・温泉権~
 (流通経済大学講師 布山裕一氏)

試験
特別講座(温泉家・北出恭子氏+杏林大学教授・古本泰之氏)

試験結果発表 修了式(認定証授与)
 17:10終了
出席状況、試験結果を踏まえて合格者には「温泉観光士」の証書を授与。

講義の合間に大学研究室の温泉関係の歴史的な蔵書を閲覧させていただく。これは勉強になりました。感謝。

↓ 写真は女性や子供も写っているためモザイク処理しています。

↓ サンモリッツ(スイス)の温泉施設の説明には感激

 

 

 

 

↓ 2019年6月スイスサンモリッツにて上記左下の温泉施設に行っています。飲泉湯治場的な観光施設。

↓ 世界の温泉地(エビアン、サンモリッツ等)。台湾新北投温泉。北投石は台湾と日本の玉川温泉(新玉川温泉には無い)だけ。


↓ 古書閲覧

↓ 日本温泉協会誌

↓ 私の蔵書と温泉資格講座のテキスト。

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